gn to t.Y. 覚え書き

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覚え書き

tY:近況131(映画 シン・仮面ライダーとか)

本郷がバッタオーグにされるいきさつも無しにいきなり逃走劇とバトルが始まるところがすばらしい。ライダーや怪人が登場するのを待っていられないもの。ウルトラマンで最初から怪獣がオンパレードするのと同じ。クモオーグはクモなのに腕2本?と思っていたらなるほどなあ。本郷や一文字にイチロー、オーグたちには過去に色々あっオーグにされてしまったのでしょうが、過去やいきさつなどどうでも良いです。ショッカーという組織があってそれを守るか倒すかの話し。意外だったのは本郷がなぜオーグされたか分からなかったところでしょうか。他のオーグたちはどうなんだろうなあ。

昔なら蜂女やクモ男にコウモリ男なんでしょうが、ジェンダーなご時世なのかオーグ。考えてみたら何十年も経っているんだもの、時代が違う。しかし最初のライダーを見ているよう。数十年経っても違和感無し。ダムや工場に波止場ばかりで都会が出てこないから? ハチオーグの街は商店街と居酒屋だし。ただよう昭和感。役者さんたちもみなさん良い感じで昭和顔。「変えたくないもの~」とか書かれた宣伝ポスターとかありましたが、これって100%監督の製作ポリシーですね。

顔に浮き出す傷とかは漫画版を思い出す。一文字隼人ライダーが最初は敵だったのも同じ。漫画ではショッカーライダーの一人で戦闘中に洗脳が解けたと思う。それにショッカーライダーたちの銃撃で本郷は命を落とした。今回はライダーの状態でかなりの銃撃を受けていたが、もしかしてこのまま・・・まさか漫画どおり・・・とよぎってしまった。

武器のない仮面ライダー。ひたすらパンチとキック。ときどきイチローのプラーナ攻撃。ただし子供の頃はトランポリンだったろうライダージャンプにライダーキックも姿が見えなくなるくらいに高く飛ぶ。サイクロンも意外な機能でライダージャンプを助けてくれる。ショッカーライダーの機関銃攻撃にもがまん。武器といえばハチオーグとの刀対決があったか。これは流れ的に東映時代劇オマージュなんでしょう。緋牡丹博徒とか。衣装もほぼ着物だったしなあ。ライダーのパンチやキックでショッカー戦闘員(ですよね)たちはつぶされ、血が吹き出し、ぐしゃぐしゃになってしまうが、実際に○○ ton とか、設定上のパンチやキック力で攻撃するとこうなっちゃうんでしょうね。そこんところがリアルで素晴らしい。リアルといえば、やっぱりライダースーツって脱げたのか? 思うに本郷がコートを手放さなかったのは姿を隠すためかと思ったが、一文字がマスクやサイクロンの他に「新しいライダースーツ」を立花に頼んでいた気がするが、記憶違いですか。戦うときは前もって着ておかないとだめなんかなあ。ハチオーグの変身が「早や着替え」っぽいのが面白い。他にリアルだなあと思ったのは、本郷ライダーの疲れ具合。ショッカーライダーと戦っている時に一文字ライダーが助けに来たが、あまり戦っていない一文字はそれなりに元気でしょうが、その横で本郷ライダーは肩で息をするような感じ。疲れない奴はいないのだ。イチローも余裕かと思ったら最後はけっこうイライラしてたし。

なるほどなあと思ったのが『プラーナ』。映画を見ている間はそんなものかと思っていたが、インド哲学では風の元素とか生命力のことなんですね。石ノ森先生もそんなことを考えていたのだろうか。ライダーを見ていたころは単純に「風力発電なんだ!」と思ってました。ガメラでいう『マナ』みたいなものか。こんなところもあるはずの無いだろうリアル。哲学には失礼ですけど。ゴジラ映画の博士による説明みたいな。こうしたことを考える仕事というのは楽しそうです。締め切りとかなければ。

それから『ハビタット』。実際にそうした団体もあるし、その団体の理念は『誰もがきちんとした場所で暮らせる世界』なんだと。以下勝手な考えですが、ショッカーというか AI のアイはそれを追及する組織なんでしょう。その世界を提供して、有無を言わさずにその中に押し込んでしまおう。そうしたら世界は平和になり人々も幸せになる。送り込む前にはしっかりプラーナ、つまり生命力もいただく。コウモリオーグのウィルスは最も効率的なハビタットへ送る方法。そのハビタット世界を構築するプログラムをイチローとルリ子が作っているんだな・・・と思ったら、ルリ子、滝、立花と本郷がたくさんの遺体を前にしたシーンではルリ子が「死んでいるが死んでない。いうなれば魂だけがハビタット世界に送られた」ようなことを言ってなかったかなあ。するともうハビタット世界は出来上がっていたのか。聞き間違いかもしれないし、セリフが多くて2、3回見ないとスッキリしない。AI が考えた幸せ。多幸感に包まれた世界。どのように多幸感を得るのか。ハビタット世界はうその無い世界。AI には疑問はなくても、人間同士の世界であればそれは恐ろしそう。恐怖。でもその世界に独りだけなら平和だなあ。観た後、しばらくして思ったのだが、AI って最終解を宗教に求めるなんてことはないでしょうか。まじめな学者が宗教にのめりこむように、いちばん論理的そうな考えがあやしいところに当てはまりそうでなんだか怖い。

怪人だからといって醜悪な見かけばかりでは無い。ハチオーグの仮面は塗装もかっこいいし正義のヒーローっぽくもある。クモオーグはちょい悪なボード好きな兄さんにも見えるし。コウモリオーグは仮面は無いけれど服が正装。おそらく研究一筋で見かけに頼らないんでしょう。仮面が無くても多幸感を感じられるし、ウィルスで簡単に人を殺せたりするので、仮面をかぶって闘争本能を高める必要もないんでしょうか。最後は戦わずに空を飛んで逃げたし。サソリオーグはちょっと手抜きかもしれませんが、女優さんをマスクで隠したくなかった? 最後に仮面が割れて顔が出てくるというのもサプライズと思いますが。オーグといえ、大量の銃撃の前では人間相手でも倒されてしまうんですね。倒すシーンは音だけで倒されるところは映っていませんでしたが、立花たちはひそかにすごい秘密兵器を持っていたりして。それにしてもなんでサソリオーグは他のオーグを泡にしてしまうような毒を使ってんだ?

漫画やテレビだと本郷は改造前もスーパーな青年だったが、今作ではルリルリにコミュ障と指摘されたりする。人づきあいが苦手なのか、ていねいな言葉使い。その裏には自信の無さや臆病ささえ感じられたりする。一文字に対するさん付けは、本郷よりも年上だからですよね。本郷は大学生(だと思う)で一文字はジャーナリストということは、おそらく社会経験は一文字の方が長い。彼に比べたらコミュ障の本郷は子供みたいなもんでしょうか。本郷役の役者さんもベスト。頼りなさもちょうど良い。鉄人28号の金田君がそのまま大人になったような。その本郷をはじめ配役がすばらしい。いちばん若いだろうルリ子さえ憂いの表情に漂う昭和感。年をとった役者さんが出てこないところが良いです。いちばん年上そうな方もすぐに退場するし。ルリ子やハチオーグと一緒にライダーやオーグたちが並んでいると、そのままアニメにしてもおかしくない。加えて人間である滝と立花がかっこよすぎなので、さらに虚構の世界に見えてしまう。それが目的なんでしょうが。

登場人物の設定でいちばん良かったのはルリルリこと緑川ルリ子。オリジナルでは普通の女性でいつの間にか消えてしましましたが、今回はただの一般人ではない。すべてをつなぐ鍵。彼女がいなければ立花や滝との話しもおさまらない。冒頭ではあの崖から吹き飛ばされるように落ちても死ななかったし、ショッカーに育てられたというのもうなづけます。何らかの強化もされてるんでしょう。あのブラウンのコートにも秘密ありですか? 銃もためらいなく撃つし。本郷ライダーを含め、今作で消えてしまうのはなんともさみしい。しかし死しても死んでないことは後で分かりますけど。用意周到自慢な彼女ですが、クモオーグの後輩のことは知らなかった。これもショッカーには派閥があって一枚岩ではないということなんでしょう。

ルリ子はショッカーを裏切りますが、元々人間な父親が組織について疑問を感じてしまうのは有りとして、ショッカーで生まれ、育てられた彼女が組織を裏切れたのは洗脳されていなかったから? それとも緑川博士が洗脳を解いたんでしょうか。電算機として作られたルリルリには常に論理的な思考が働いていたのかも。洗脳されているのはオーグだけなのかもなあ。他の博士たちはやりたいことができれば洗脳しなくても狂ったように仕事に打ち込むだろうし。イチローの持っていた家族写真。そこに私も写っていたら・・・ルリ子はそんなことを言っていた気がする。それなら遺伝子的につながっているのは父親だけということ。母親とは関係なし。それだから母を失った兄の心情を分かるのは難しい。だから兄を裏切れたんでしょうねえ。彼女は父親の緑川博士のこともただの遺伝子的つながりとしか思っていない。ルリ子は兄を裏切ったけれど、一般の人間がどうなろうとかまわないと思っているんではない? 自分以外の者はショッカーでも人間でも信頼しないんだから。それだから彼女がショッカーを止めようとしているのは彼女自身が納得できないから。自分が正しいかどうか。それがちょっと変わっていくのは弱い人間でもある本郷のおかげなんですよね。そのためにも緑川博士は彼女を本郷に託したかったのかも。本郷に赤いマフラーを渡すシーンで博士はちょっと笑って気がしますが、うれしかったんでしょうね。なんだかんだとルリ子は家族を理解しようとしていたのか。

登場される方たちみなさんが際立つ方たちでしたが、ふと考えると主役はバイクだったのかも。緑川博士にイチローに一文字、そして本郷。ある者には孤独の象徴であり、家族の象徴でもあったりする。イチローの台座の両脇にはバイクがあったし、ルリルリはバイクのおかげで本郷の暖かさを抱きしめて知ったし。彼女にとってバイカー=父親の赤いマフラー。赤いマフラーを渡された本郷。それは一文字にも渡される。色々つながり、受け継がれるんですねえ。二人乗りは命を預けるようなもの。信頼がなければできません。この映画を見てバイクの免許を取る人もいたりして。

最後は漫画みたいに脳みそにならなくて本当によかった。孤独が好きなくせに独りはさみしい一文字。本郷と話すことが本当にうれしそう。良いラストだったなあ。パート2があるならなんとか実体化してくれんものか。一文字のスーツが2本線ってことは、それもないんだろうなあ。ハビタット世界ででも戦ってくれないものか。そこでならまたルリ子といっしょになれそうだし。あきらかにロボット刑事な K やキカイダーらしい J (ジローの J なんでしょうねえ)が登場したので、またなんらかの石ノ森キャラクターが登場してくれたらうれしい。スカルマンとかイナズマンとか、ショッカーの派閥がブラックゴーストになるとか、そしたら島村ジョーが誕生するとか、さらには岩佐さんの 009ノ1 の登場とか、おじさんホイホイで良いので観たい! 今作ではハチオーグに操られた一般人やコウモリオーグのウィルスに犯された一般人はたくさん登場しましたが、滝と立花を除いてまったく人間との絡みがなかったとはず。見物人の姿すら見えない。戦う相手はオーグのみ。世間にはまったく知られていない事件なのかもなあ。

仮面ライダー1号の数十年後の答え合わせ。本郷も骨を折ったんだ! 石ノ森先生も文句言わないと思う。もしご存命なら作ろうと思ったに違いないから。

でもなんだかんだとジーンときたのは、仮面のからはみ出る髪の毛でしょうか。これこそ仮面の証し。かっこよかった。